シュルレアリスム的なボールペン画を日々描いている天北竹みのるる尾です。
形而上絵画とシュルレアリスムは、どちらも「見た目どおりではない世界」を描いた絵画の潮流です。
でも実は、生まれた背景も、表現しようとしたものも、はっきりと違います。
この記事を読むと、形而上絵画とシュルレアリスムがそれぞれ何を目指した表現なのか、そしてどこが同じでどこが違うのかが、順を追って分かるようになります。
代表的な画家や作品の具体例も交えながら、できるだけやさしい言葉で説明していきます。
さらに記事の後半では、私自身がボールペン画で連想イラストやシュルレアリスム的な絵を描いている理由にも触れます。
不思議で少し謎めいた絵の世界に、これから一緒に足を踏み入れていきましょう。
形而上絵画とシュルレアリスムはどう違うのか、まず結論から
形而上絵画とシュルレアリスムの違いを一言でまとめると、形而上絵画は「静けさと違和感によって謎を描いた絵画」であり、シュルレアリスムは「夢や無意識の力を借りて現実を超えようとした芸術運動」だといえます。
形而上絵画は画家ジョルジョ・デ・キリコが切り開いた表現で、がらんとした広場や長い影、意味ありげに置かれた物によって、説明のつかない不安や謎めいた気配を作り出しました。
一方のシュルレアリスムは、それより少しあとの時代にアンドレ・ブルトンを中心として広がった運動で、理性ではコントロールできない夢や無意識の世界を、絵や文章に取り出そうとしました。
つまり形而上絵画は一人の画家が切り開いた「静かな謎の表現」であり、シュルレアリスムはその表現に影響を受けながら、より大きな仲間の輪とともに「無意識を解き放つ運動」へと広がっていったものだと理解すると、全体像がつかみやすくなります。

これが私が描いたボールペン画です。しばらく前に描いたものに加筆しました。下部の人物は自分自身で、目級の中にいるイメージです。異世界への没入感を味わいたくて描きました。
これが私が描いたボールペン画です。
しばらく前に描いたものに加筆しました。
下部の人物は自分自身で、目級の中にいるイメージです。
異世界への没入感を味わいたくて描きました。

形而上絵画とは何か
この章では、形而上絵画という言葉がどのような絵を指すのか、そしてなぜそのような名前がついたのかを、成り立ちから見ていきます。
デ・キリコが切り開いた静けさの絵画
形而上絵画は、イタリアの画家ジョルジョ・デ・キリコによって20世紀初頭に生み出された表現です。
画面には誰もいない広場や建物、長く伸びる影、彫像やマネキンのようなモチーフが並び、現実の風景でありながら、どこか夢の中のような静けさと違和感が漂います。
この違和感は、ものを大げさに歪めることではなく、遠近法や配置を独特にずらすことによって生まれています。

形而上絵画という言葉の意味
形而上絵画という言葉は、目に見える形の奥にある、目に見えない意味や謎を絵にしようとしたことに由来します。
日常の風景の中に、説明のできない不思議さや存在の謎を感じさせることこそが、形而上絵画の目指したものだといえます。
シュルレアリスムとは何か
続いてこの章では、シュルレアリスムがどのような運動として始まり、何を目指していたのかを掘り下げていきます。
シュルレアリスム誕生の背景にあったダダの運動
シュルレアリスムが生まれる前段階には、既存の芸術や社会の価値観そのものを疑い、あえて壊そうとしたダダという運動がありました。
ダダは既成の秩序や常識に対する強い異議申し立てから生まれた表現で、その後シュルレアリスムはこのダダの精神を引き継ぎながら、単なる破壊ではなく、無意識や夢という新しい領域を積極的に探求する方向へと進んでいきました。
アンドレ・ブルトンと「シュルレアリスム宣言」
シュルレアリスムという運動を理論としてまとめ上げたのが、詩人アンドレ・ブルトンです。
ブルトンは「シュルレアリスム宣言」を発表し、理性による管理を離れた思考の動き、つまり夢や無意識こそが、人間の本当の姿を映し出すと考えました。
この考え方にもとづいて、画家たちは自動記述と呼ばれる、頭で考えずに手を動かす技法や、思いがけない組み合わせによって、理性だけでは生まれない映像を描き出そうとしました。

形而上絵画とシュルレアリスムの違いを4つの視点で比較
ここまで見てきた形而上絵画とシュルレアリスムの違いを、表現方法・制作の手法・時代とつながり・代表的な画家という4つの視点から、あらためて整理していきます。
表現方法の違い(静けさと不安 vs 夢と無意識)
形而上絵画は、現実にありそうな風景をベースにしながら、静けさや孤独感、説明のつかない不安を漂わせることに重きを置いています。
これに対してシュルレアリスムは、現実にはありえない光景や、常識では結びつかないもの同士の組み合わせによって、夢や無意識の世界そのものを画面に持ち込もうとします。
制作の手法の違い(構図的な計算 vs 自動記述などの偶然性)
形而上絵画は、遠近法や光と影の使い方を計算しながら、静かな違和感をつくり出す、いわば構図重視の絵画です。
一方でシュルレアリスムは、自動記述のように頭で考える前に手を動かす方法や、偶然できた形からイメージを広げる方法など、偶然性や無意識の働きを積極的に取り入れている点が大きな特徴です。
時代とつながりの違い
形而上絵画は1910年代にデ・キリコによって始められた表現であり、シュルレアリスムはその後の1920年代にブルトンを中心として広がった運動です。
シュルレアリスムの画家たちはデ・キリコの形而上絵画から強い影響を受けており、二つの表現は時代的にも内容的にもつながりを持っています。
代表的な画家と作品の違い
形而上絵画を代表する画家はジョルジョ・デ・キリコであり、シュルレアリスムを代表する画家にはサルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、マックス・エルンストなどが挙げられます。
同じ「謎めいた絵」という印象を持たれやすい二つの表現ですが、担い手となった画家や代表作を見比べることで、その違いがより具体的に見えてきます。
- 表現方法:静けさと不安(形而上絵画) vs 夢と無意識(シュルレアリスム)
- 制作手法:構図的な計算 vs 自動記述などの偶然性
- 時代:1910年代(形而上絵画) → 1920年代(シュルレアリスム)
- 代表画家:デ・キリコ vs ダリ・マグリット・エルンストなど
形而上絵画とシュルレアリスムをつなぐ共通点
違いを見てきた一方で、形而上絵画とシュルレアリスムには共通する部分もあります。
どちらも、目に見える現実をそのまま写し取るのではなく、その奥にある謎や不思議さ、意識の届かない領域を絵によって表そうとした点は共通しています。
実際にシュルレアリスムの画家たちは、デ・キリコの形而上絵画に強く惹きつけられ、そこからイメージや手法のヒントを得ながら、自分たちの表現を広げていきました。
つまり形而上絵画は、シュルレアリスムという大きな運動が育つための、大切な土壌のひとつだったといえます。
代表的な画家と作品で見る違いの具体例
言葉だけでの説明では分かりにくい部分もあるため、この章では実際の画家と作品を挙げながら、形而上絵画とシュルレアリスムの違いを具体的に見ていきます。
ジョルジョ・デ・キリコの作品
デ・キリコの代表作のひとつに「通りの神秘と憂鬱」があります。
長く伸びる影と、がらんとした通り、遠くに見える人影によって、何も劇的なことは起きていないのに、見る人の心に静かな不安を残す作品です。
サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、マックス・エルンストの作品
ダリの「記憶の固執」は、やわらかく溶けた時計が描かれた作品で、現実にはありえない光景によって、時間という概念そのものを夢のように歪めています。
マグリットの「ゴルコンダ」は、山高帽をかぶった同じ姿の男性たちが空から降ってくるように並ぶ作品で、日常的な光景の中に非日常を差し込むことで、静かな驚きを生み出しています。
エルンストの作品では、コラージュや独自の技法によって、思いがけないもの同士が組み合わされ、夢の中の一場面のようなイメージが作られています。

目や内臓、足や貝など異なる要素を組み合わせてシュルレアリスム的に仕上げたモンスターデザイン。フォトショップで制作しました。
目や内臓、足や貝など異なる要素を組み合わせてシュルレアリスム的に仕上げたモンスターデザイン。
フォトショップで制作しました。
私がボールペン画で連想イラストやシュルレアリスム的な絵を描く理由
ここからは少し私自身の話をさせてください。
私は、ボールペン画に色鉛筆で色を重ねながら、連想イラストやシュルレアリスム的な絵を描いています。
昔、フォトショップのコラージュでモンスターデザインをしていましたが、何となくまとまらず、ボールペン画でモンスターを描くようになり、陰影表現を覚えますが、陰影をつけることでコラージュもまとめられる事がわかり、現在に至っています。
光と影の表現はシュルレアリスム的表現でも大事なように思っています。
小学生のころ、ドラゴンクエストの鳥山明さんのモンスターの絵を模写していました。
そのうち、自分でもデザインするようになり、ゲームブックを作りながら、それにモンスターを掲載していました。
モンスターデザインは紆余曲折がありながらも、現在に至っています。

こうして今の私の絵は、連想する力、妄想する力、空想する力を大事にしながら生まれています。
ボールペン画に色鉛筆で色をつけて連想イラストやシュルレアリスム的な絵を描くことと、フォトショップでの描画やコラージュによってモンスターデザインを作ること、この二つが私の作品の柱になっています。

これまで、シュルレアリスム的なボールペン画を30点以上、モンスターデザインを100点以上作ってきました。
形而上絵画・シュルレアリスムをもっと味わうために
形而上絵画やシュルレアリスムの作品は、美術館の展覧会や画集で見られるほか、代表的な作品であれば書籍やインターネット上の紹介記事でも触れることができます。
実物を目の前にすると、静けさや違和感、夢のような感覚が、画面からより強く伝わってくるように感じられます。
先日、オペラシティギャラリーでシュルレアリスム展を見ました。
そして唇の形をした椅子を見ておしゃれだなと思いました。
また、目の付いたメトロノームもかっこいい感じでした。

私自身が制作しているシュルレアリスム的な連想イラストやモンスターデザインの作品は、下記のnoteでご覧いただけます。
気になる作品がありましたら、ぜひのぞいてみてください。
https://note.com/mankai8080
まとめ
- 形而上絵画:デ・キリコが静けさと違和感によって謎を描いた表現
- シュルレアリスム:ブルトンを中心に夢や無意識を取り出そうとした運動
- 時代:形而上絵画が先に生まれ、シュルレアリスムに影響を与えた
- 共通点:どちらも「現実の奥にあるもの」を描こうとした
形而上絵画は、デ・キリコが静けさと違和感によって謎を描き出した表現であり、シュルレアリスムは、ブルトンを中心に夢や無意識の力を絵や言葉に取り出そうとした運動です。
時代としては形而上絵画が先に生まれ、シュルレアリスムの画家たちがそこから影響を受けて自分たちの表現を広げていったという流れがあります。
表現方法や手法には違いがありながらも、どちらも「目に見える現実の奥にあるもの」を描こうとした点でつながっています。
私自身も、ボールペン画による連想イラストやシュルレアリスム的な絵、コラージュによるモンスターデザインを通して、頭の中にある不思議な世界を形にする作業を続けています。
シュルレアリスム的な作品や形而上学的作品を見ることで、読者の方の妄想力や創造力を高められると思います。
ぜひ、ご自身のお気に入りの絵や表現、妄想的な何かを見つけてみてください。
それだけでとても楽しいと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1. 形而上絵画とシュルレアリスムは、どちらが先に生まれましたか。
形而上絵画が1910年代に先に生まれ、その後1920年代にシュルレアリスムが運動として広がりました。
Q2. 形而上絵画はシュルレアリスムに含まれますか。
形而上絵画は、シュルレアリスムより前に独立して生まれた表現ですが、シュルレアリスムの画家たちに大きな影響を与えたという意味で、深いつながりを持っています。
Q3. 形而上絵画とシュルレアリスムの絵は、見た目でどう見分ければよいですか。
静かな広場や建物、長い影を使って現実的な違和感を描いていれば形而上絵画に近く、現実にはありえない光景や、無意識から出てきたような夢のイメージであればシュルレアリスムに近いと考えると分かりやすくなります。
Q4. 代表的な画家には、それぞれ誰がいますか。
形而上絵画の代表的な画家はジョルジョ・デ・キリコであり、シュルレアリスムの代表的な画家にはサルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、マックス・エルンストなどがいます。



















