日々、シュルレアリスム的ボールペン画を描いている天北竹みのるる尾です。
「日本人のシュルレアリスム作家って、誰がいるのだろう」と調べ始めても、名前が断片的にしか出てこず、全体像がつかみにくいと感じる方は多いと思います。
海外のダリやエルンストは有名でも、日本の作家となると、意外と手がかりが少ないものです。
この記事では、日本でシュルレアリスムがどう受け入れられてきたかを、時代順にたどります。
古賀春江、福沢一郎、瀧口修造といった代表的な人物から、小説家の安部公房、澁澤龍彦のような紹介者まで、役割ごとに整理しました。
読み終えるころには、気になる作家を一人選んで、作品を見に行くところまで進めるはずです。
絵を描く立場の私自身の視点も、最後に少しだけ添えています。
日本のシュルレアリスムはどう始まったのか
この章では、日本にシュルレアリスムが入ってきた1920年代から、言葉が定着していく流れまでを押さえます。
最初に紹介したのは画家ではなかった、という意外な事実にも触れます。

1920年代、まず文学と評論から紹介された
日本のシュルレアリスムは、1925年ごろに文学の分野から紹介され始めました。
フランスで1924年に宣言が出された翌年ですから、当時としてはかなり早い動きです。
その後、美術評論家の森口多里が美術の視点から紹介しました。
絵画より先に言葉として入ってきたことが、日本のシュルレアリスムの大きな特徴です。
理由は単純で、作品の実物を見る機会が少なく、翻訳された文章や図版が主な情報源だったからです。
「超現実主義」という訳語と日本での受け止められ方
シュルレアリスムは、日本では「超現実主義」と訳されて広まりました。
現実を超えた現実、つまり無意識や夢の領域を描く考え方を指します。
ただし、日本では思想としての側面よりも、不思議で幻想的な画風として受け取られる場面が多くありました。
この受け止め方の違いが、のちに日本独自の「シュール」という感覚につながっていきます。
日本人シュルレアリスム作家の代表格を画家・詩人・写真家で整理
この章では、名前が挙がりやすい四つのグループを、作風の違いが見えるように並べます。
誰から見ればよいか迷ったときの、目安になる章です。

古賀春江:機械と夢を重ねた先駆者
古賀春江は、日本のシュルレアリスムを語るうえで最初に名前が出る画家です。
機械や近代的なモチーフと、夢のような光景を一枚に重ねた作風が特徴です。
初めて見る方には、まず古賀春江から入るのがおすすめです。
色彩が明るく、怖さよりも詩的な印象が先に立つため、シュルレアリスムの入口として無理がありません。
福沢一郎:パリから思想ごと持ち帰った画家
福沢一郎は、フランスで学んだシュルレアリスムを日本に持ち帰り、紹介と制作の両面で活動した画家です。
作品を描くだけでなく、理論を伝える役割も担いました。
瀧口修造とともに、日本のシュルレアリスム運動の中心にいた人物です。
思想面から日本の流れを知りたい方は、福沢一郎の活動を追うと全体像がつかみやすくなります。
瀧口修造:作家たちをつなぐ詩人・批評家
瀧口修造は、詩人であり美術評論家でもあった人物です。
自ら作品を作るだけでなく、若い作家を紹介し、海外の動向を伝える橋渡し役を果たしました。
この役割の大きさが、瀧口修造を「作家を生んだ作家」と呼びたくなる理由です。
戦後の前衛美術にも影響を与えたため、日本の現代美術を知るうえでも欠かせない名前です。
北脇昇・靉光ら、戦前の画家たち
戦前には、古賀春江や福沢一郎以外にも、独自の幻想世界を描いた画家が多く活動しました。
北脇昇や靉光は、その代表例としてよく名前が挙がります。
それぞれ画風は大きく異なります。
北脇昇は理知的で構成的な画面、靉光は内面をえぐるような重い筆致が魅力です。
同じ「シュルレアリスム的」でも、幅広い表現があることが分かります。

文学・映像の分野で活躍した日本人作家
この章では、絵画以外の分野に目を向けます。
小説や評論の世界にも、シュルレアリスムの影響を受けた作家が多くいます。

安部公房:小説で日本的シュルレアリスムを描いた作家
安部公房は、日常が突然ゆがみ始める物語で知られる小説家です。
代表作の『壁』は、自分の名前を失った男が主人公の作品で、シュルレアリスム的な発想が色濃く出ています。
日本人でシュルレアリスムを表現した作家を探すとき、最初に名前が挙がる一人です。
絵画に馴染みがなくても、小説から入れば無理なく触れられます。
澁澤龍彦:海外の作家を日本に広げた紹介者
澁澤龍彦は、翻訳や評論を通じて、海外のシュルレアリスムや幻想的な芸術を日本の読者に紹介した人物です。
瀧口修造とともに、美術業界の外側にも関心を広げた功績があります。
作家というより「案内人」の役割が中心ですが、ここを外すと日本での受容の流れが見えなくなります。
彼の著作を手に取ると、海外作家の魅力を日本語で味わえます。
戦後から現代へ広がったシュルレアリスム
この章では、戦後の展開と、現代の私たちが日常で目にする「シュール」につながる流れを整理します。
専門的な芸術運動が、どうして一般の言葉になったのかが分かります。

戦後の前衛と、漫画・アニメ・ゲームに浸透した「シュール」
戦後は、美術の世界でも前衛的な動きが活発になり、シュルレアリスムの影響が幅広い分野に広がりました。
瀧口修造や澁澤龍彦の紹介活動が、その土台になっています。
やがて漫画やアニメ、ゲームなどの大衆文化にも、幻想的で不条理な表現が浸透しました。
専門家でなくても、意識せずシュルレアリスム的な表現に触れている人は多いはずです。
日本独自の「シュール」という言葉の広がり
今では「シュールな笑い」「シュールな光景」のように、本来の意味から少し離れて使われる言葉になりました。
日常会話で気軽に使えるほど浸透したことが、日本での受容の最後の姿です。
ただし、本来のシュルレアリスムは、無意識や夢を手がかりに新しい表現を探す試みです。
言葉が広がったぶん、元の意味との違いも意識しておくと、作品の見え方が変わります。
海外の代表作家と日本人作家を見比べるポイント
この章では、ダリやエルンストなど海外の作家と並べたときに、日本人作家の作品がどう見えるかを整理します。
比べる視点を持つと、美術館での鑑賞が一段と面白くなります。

ダリ・エルンスト・デルヴォーとの違い
ダリは、精密な描写で夢の世界を写実的に描いた作家です。
エルンストは、コラージュやフロッタージュなど技法の実験を重ねた作家です。
デルヴォーは、静かな夜の街や女性像で独特の世界をつくりました。
日本人作家には、こうした海外作家の影響を受けつつ、余白や静けさを重んじる傾向も見られます。
これは断定できない印象論ですが、見比べる楽しみのひとつになります。
作品を見るときの3つの着眼点
作品を見るときは、次の3点を意識すると理解が深まります。
- モチーフの組み合わせ方:どんな物同士が、なぜ結び付けられているか
- 画面の空気感:静かか、ざわついているか、明るいか、暗いか
- 技法の特徴:油彩、コラージュ、写真、ペン画など何で描かれているか
自分がシュルレアリスム的作品を作るとき、まず額縁を書くことから始めて、その次に直観的に描きたいと思った形やモチーフから連想して描くことが多いです。
そして連続して連想モチーフを描いていきます。
そこには、自分の無意識との対話が洗われていると思われます。
日本人作家の作品に会える美術館・本の探し方
この章では、作品を実際に見るための具体的な探し方を紹介します。
画集を買う前に、まず何を確認すればよいかも分かります。

作品に触れる方法は、大きく三つあります。
- 常設展や企画展のある美術館で、実物を見る
- 図録や画集で、細部まで時間をかけて眺める
- 文庫本など小説から、言葉で世界に入る
最初の一歩としては、近くの美術館の展覧会情報を調べるのがおすすめです。
実物の色や大きさは、写真では伝わりにくいため、一度でも実物を見ると印象が大きく変わります。
ボールペン画で描く、私のシュルレアリスム的表現
この章では、私自身がボールペン画とコラージュで、どのようにシュルレアリスム的な絵を描いているかをお話しします。
制作の現場から見えてきた、線と陰影の話が中心です。

連想から絵が生まれる過程
私の絵は、連想する力、妄想する力、空想する力を大事にして生まれています。
頭の中にしかなかったものが、紙の上に形になっていく感覚は、何度経験しても嬉しいものです。
ボールペン画に色鉛筆で色をつけて、連想イラストやシュルレアリスム的な絵を描いています。
ボールペンの線は消せないので、迷いながらも重ねるうちに、思いがけないモチーフが現れてきます。
ある巨大なピエロの絵などは最初に額縁を描き、ピエロの細胞のような頭部を描きました。
最初は頭部にするというイメージはなく、細胞のようなものを描きたかっただけです。
そして描いているうちにピエロ的な身体を描きたくなり、背景の遠景を描きたくなり、自分自身の影も描き入れて、気が付くと巨大なピエロのイメージの絵になっていました。
コラージュにも陰影が必要だと気づいた話
以前は、フォトショップで写真のコラージュを作っては、何となくまとまらない印象を抱えていました。
どこがおかしいのか分からないまま、もやもやした気持ちで作り続けた時期がありました。
そんな時、ボールペン画を描くようになり、線を重ねて陰影をつける感覚が身につきました。
その経験から、写真のコラージュで作るモンスターデザインにも、陰影をつければちゃんとまとまるのだと気づきました。
この発見が、私にとって大きな転機になりました。

日本人のシュルレアリスム作家についてのよくある質問
この章では、調べ始めた方が最初につまずきやすい疑問に答えます。

日本で最初のシュルレアリスム作家は誰ですか
「最初の一人」を一人に絞るのは難しいのが実情です。
文学から紹介が始まり、古賀春江や福沢一郎といった画家が続いたため、分野によって答えが変わります。
美術の分野で先駆者として名前が挙がることが多いのは、古賀春江です。
まずはこの名前から調べると、流れがつかみやすくなります。
小説家にもシュルレアリスムの作家はいますか
います。
安部公房は、日常が突然ゆがむ物語で知られ、日本でシュルレアリスム的な表現を小説に取り入れた代表的な作家です。
澁澤龍彦のように、紹介者として大きな役割を果たした人物もいます。
初心者はどの作家から見ればよいですか
最初は、色彩が明るくて入りやすい古賀春江の作品がおすすめです。
文学が好きな方は、安部公房の『壁』から入ると、無理なく世界に触れられます。
歴史の流れを先に知りたい方は、瀧口修造と福沢一郎の活動を調べると、全体像が見えやすくなります。
まとめ
日本のシュルレアリスムは、1925年ごろに文学から紹介され、画家、詩人、小説家へと広がってきました。
古賀春江、福沢一郎、瀧口修造、北脇昇、靉光、安部公房、澁澤龍彦といった人物を、役割ごとに見ていくと、全体の流れがつかめます。
戦後には大衆文化にも浸透し、今では「シュール」という日常の言葉にまでなりました。
まずは気になる作家を一人選んで、作品や本に触れてみると、新しい発見があります。
私自身も、ボールペン画に色鉛筆で色をつけ、連想イラストやシュルレアリスム的な絵を描き続けています。
フォトショップでのコラージュによるモンスターデザインも、作品の柱のひとつです。
作品は下記のnoteでご覧いただけます。
https://note.com/mankai8080
これまでに描いたシュルレアリスム的ボールペン画などは30点以上、モンスターデザインに至っては100点以上作っています。


















